中学時代に不登校だった息子が、高校進学をきっかけに「もう一度通ってみる」と決意しました。
しかし、実際に通い始めると、教室の空気や人間関係の中で強い不安を感じ、わずか数日で通えなくなってしまいます。
「行きたくない」ではなく「怖くて行けない」。
その言葉の重さに、親としてどう向き合えばいいのか、何度も悩みました。
出席日数の不安、家族の衝突、そして限界。
そんな中でたどり着いたのが、「無理に合わせるのではなく、環境を変える」という選択でした。
このブログでは、全日制高校への挑戦から、通信制高校への転校を決断するまでの約1ヶ月間を、親の視点でありのままに記録しています。
遠回りに見えるかもしれない。
それでもこの経験は、息子が自分に合った生き方を見つけるための大切な一歩でした。
同じように悩んでいる方に、少しでも参考や安心につながればと思います。
シナリオ①「はじまりは、こわいくらいでちょうどいい」
入学式・朝
(校門前。人が多い。ざわざわした音)
ナレーション(父)
「こんなに人がいる場所に来たのは、いつぶりだろう」
(息子、少し猫背で立っている。視線は下)
息子(心の声)
「でかいな……みんな」
「なんであんな普通に立ってられるんだろ」
(周りの生徒の笑い声。制服の着こなしもバラバラ)
母(小さな声で)
「大丈夫、ここまで来れただけで十分だよ」
(息子、小さくうなずく)
体育館
(整列。イスに座る音)
ナレーション(父)
「逃げ出すんじゃないかって、正直思ってた」
(息子、足を小刻みに揺らしている)
息子(心の声)
「帰りたい…いや、無理だ」
「でも…ここで帰ったら、また同じだ」
(深呼吸する)
(名前を呼ばれる場面)
教師
「――○○ ○○」
(一瞬の間)
息子
「…はい」
(少し小さいが、確かに返事)
ナレーション(父)
「その“はい”で、十分だった」
帰り道
(校門を出る。人がバラけていく)
母
「どうだった?」
(少し間)
息子
「……疲れた」
父(笑いながら)
「だよな」
息子
「でも……」
「思ってたよりは、無理じゃなかった」
(父と母、顔を見合わせる)
焼肉屋
(ジュージュー焼ける音。少し明るい雰囲気)
父
「今日はお疲れさん。入学祝いだ」
母
「好きなだけ食べていいよ」
(息子、肉を見て少し表情が緩む)
息子
「……じゃあ、タン」
父
「いいね」
(少し間。肉を焼く音)
息子
「……寝れるとこまでやってみる」
(両親、一瞬止まる)
息子(続けて)
「毎日じゃなくていいから」
「行ける日だけ」
母(静かに)
「うん、それでいい」
父
「それが一番強いと思うぞ」
(息子、小さくうなずく)
帰宅・夜
(部屋。静か)
(制服を脱いで、ベッドに座る)
息子(心の声)
「今日、逃げなかったな」
(スマホを見るが、すぐ伏せる)
(天井を見る)
息子(小さく)
「……まあ、いいか」
(布団に入る)
ナレーション(父)
「“頑張る”って言葉は、時々重すぎる」
「でも今日のあいつは、確かに前に進んでいた」
ラストカット
(部屋の電気が消える)
テロップ
「とりあえず、1日目クリア」
シナリオ②「2日目の壁」
朝・自室
(カーテン越しの朝の光)
(息子、目は覚めているが布団の中)
息子(心の声)
「……今日か」
「行けるか…?」
(胸を押さえるような仕草)
(机の上に薬の袋)
ナレーション(父)
「“行けるかどうか”じゃない」
「“行くかどうか”でもない」
「その間で揺れてる」
(息子、手を伸ばして薬を取り、ポケットに入れる)
息子(心の声)
「やばくなったら、これ飲めばいい」
(ゆっくり起き上がる)
登校前・リビング
母
「おはよう」
息子
「……おはよ」
(少し間)
父
「今日も、とりあえず行ってみるか」
(息子、小さくうなずく)
母
「無理だったら、帰ってきていいからね」
息子
「……うん」
(“逃げ道がある安心”が少しだけ表情を緩める)
教室
(ざわざわした教室)
(息子、自分の席に座る。周りの会話が耳に入る)
クラスメイトA
「昨日さー」
クラスメイトB
「マジで?」
(その会話が“遠く感じる”演出)
息子(心の声)
「無理だな…この空気」
(手が少し震える)
(ポケットの薬を触る)
息子(心の声)
「まだ大丈夫…まだ」
授業・自己紹介
教師
「じゃあ今日は自己紹介をしていきます」
(教室が少し静まる)
(順番に進んでいく)
(息子の番が近づく)
息子(心の声)
「やばい…きた」
「無理かもしれない」
(呼ばれる)
教師
「――○○くん」
(立ち上がる。少し間)
息子
「……○○です」
「よろしくお願いします」
(それだけ。短い)
(座る)
(心臓の音だけが強調される)
息子(心の声)
「終わった…」
ナレーション(父)
「たった一言」
「でも、あいつには長い距離だった」
帰宅
(玄関のドアが開く音)
息子
「ただいま…」
母
「おかえり」
(息子、そのまま部屋へ)
自室
(制服のままベッドに倒れ込む)
息子(心の声)
「疲れた……」
(天井を見る)
(ポケットから薬を取り出す)
息子
「……使わなかったな」
(少しだけ安心した表情)
(そのまま目を閉じる)
夕方・リビング
(父と母、小さな声で会話)
母
「今日も行けたね」
父
「ああ…でも、ギリギリだな」
母
「明日、どうなるかな…」
父
「……わからないな」
(少し沈黙)
父
「でも、今日やったことは消えない」
夜・自室
(布団に入る息子)
息子(心の声)
「明日、行けるかな…」
(少し間)
息子
「……とりあえず、寝るか」
(電気を消す)
ラストナレーション
ナレーション(父)
「不安は消えない」
「でも、“できたこと”も確かに残っている」
テロップ
「2日目、なんとかクリア」
シナリオ③「3日目、小さな自信と距離」
前日の夜・リビング
(スマホの通知音)
母
「あ、学校からメール…」
(画面を見る)
母(少し驚いたように)
「“自己紹介もはっきりできていました。周りと同じように過ごせています”だって」
(父、少し間を置いて息を吐く)
父
「……そうか」
ナレーション(父)
「“同じようにできた”」
「その言葉だけで、少し肩の力が抜けた」
母
「よかったね…」
(静かな安心)
回想(数日前・自宅)
(夕方、リビング)
息子(少し間を置いて)
「……学校のこと、あんまり聞かないでほしい」
(父と母、少し驚く)
母
「うん……どうして?」
息子
「うまく言えないし…」
「聞かれると、余計に疲れる」
(少し沈黙)
父(ゆっくり)
「……わかった」
母(やさしく)
「話したくなったら、いつでも聞くからね」
(息子、小さくうなずく)
ナレーション(父)
「“聞かない”っていうのも、関わり方の一つなんだと、その時思った」
現在・朝(3日目)
(目覚まし)
息子
「……眠い」
(布団の中で少し止まる)
(リビング)
母(小声)
「今日どうかな…」
父
「……信じるしかないな」
(自室、息子がゆっくり起き上がる)
(着替える音)
リビング
(息子、制服で現れる)
母
「おはよう」
息子
「……おはよ」
父
「眠そうだな」
息子
「うん」
(それ以上は踏み込まない空気)
ナレーション(父)
「聞きたいことは山ほどある」
「でも――」
登校
母
「いってらっしゃい」
息子
「……いってきます」
(ドアが閉まる)
(少しの静寂)
母(小さく)
「本当は、いろいろ聞きたいね」
父
「ああ…でも、今は我慢だな」
帰宅(3日目)
(玄関の音)
息子
「ただいま」
母
「おかえり」
(少し間)
(母、何か言いかけて止まる)
母
「……」
(息子、そのまま部屋へ向かう)
父(小さく)
「……聞かないで、だもんな」
母(うなずく)
リビング(息子が部屋に入った後)
母
「今日どうだったか、聞きたくなるね…」
父
「聞けば楽になるのは、こっちだからな」
(少し沈黙)
母
「でも、あの子は逆なんだよね」
父
「ああ」
「聞かれると、しんどくなる」
ナレーション(父)
「“支えたい”と“邪魔しない”は、時々ぶつかる」
自室
(息子、ベッドに座る)
息子(心の声)
「……3日行った」
(少し間)
(スマホを見るが、閉じる)
息子
「……まあ、いいか」
(横になる)
夜・リビング
(父と母)
母
「3日続いたね」
父
「ああ」
母
「何も聞けてないけど…」
父
「それでいいんだと思う」
(少し間)
父
「“行けてる”っていう事実だけで、今は十分だ」
母(静かにうなずく)
ラストナレーション
ナレーション(父)
「言葉がなくても、前に進んでいることはある」
「見守るって、思っているより難しい」
テロップ
「3日目、静かに継続中」
シナリオ④「4日目、止まる朝」
朝6:30・自室
(カーテン越しの朝の光)
母(ドア越しに)
「起きる時間だよ」
(少し間)
(布団が動く)
息子
「……うん」
(ゆっくり起き上がる)
ナレーション(父)
「4日目」
「ここからが本当の勝負だと思っていた」
自室
(息子、ベッドに座りスマホを見る)
(静かな時間が流れる)
ナレーション(父)
「起きてすぐ動けるわけじゃない」
「この“30分”も、あいつにとっては準備の時間だった」
7:00・リビング
(息子が降りてくる)
母
「おはよう」
息子
「……おはよ」
(自然に朝の流れ)
(制服に着替え始める)
ふとした会話
(母、何気なく)
母
「……お弁当、どうやって食べてるの?」
(息子、少し手を止める)
息子
「……一人で」
(少し間)
母
「みんなは?」
息子
「なんか…男子、みんなどっか行っちゃうんだよね」
父
「どっかって?」
息子
「寮のやつ多いから」
「カフェテリア行ってる」
(少し間)
息子
「弁当のやつは、あんまいない」
(静かな空気)
ナレーション(父)
「初めて、学校の中のことを聞いた」
母の感情
(母、ふっと表情が曇る)
(頭の中に“ひとりで弁当を食べる息子”のイメージ)
(小さく息をのむ)
母(心の声)
「一人で…食べてるんだ」
(目に少し涙が浮かぶ)
(すぐ顔を背ける)
玄関前
(出発の時間)
(母、少し様子がおかしい)
母
「……ごめん、今日は……」
(言葉に詰まる)
父
「俺が送るよ」
(息子、少しだけ母を見る)
(母、無理に笑おうとするがうまくいかない)
ナレーション(父)
「たった一瞬の表情だった」
「でも――」
車の中
(静かな車内)
(少し走る)
息子
「……やっぱ今日、行きたくない」
(父、少し間を置く)
父
「そうか」
(無理に説得しない)
父
「じゃあ、今日は休むか」
(息子、小さくうなずく)
帰り道
(Uターン)
ナレーション(父)
「ここで無理やり連れて行くこともできた」
「でも、それは違う気がした」
自宅前
(車が止まる)
息子
「……さっきさ」
父
「うん?」
息子
「お母さん、なんか悲しそうだったじゃん」
(父、黙って聞く)
息子
「なんか……あれ見たら」
「今日、頑張れないなって思った」
(少し間)
息子
「だから休む」
(父、ゆっくりうなずく)
父
「そっか」
リビング(帰宅後)
(母がいる)
母
「……あれ?」
父
「今日は休むって」
(母、一瞬表情が曇る)
母
「ごめんね……」
息子
「……別に」
(そのまま部屋へ)
両親の会話
母
「私のせいだよね…」
父
「……きっかけにはなったかもな」
(少し間)
母
「やっちゃったな…」
父
「でもな」
(母を見る)
父
「無理して行かせるよりは、いいと思う」
父の不安
ナレーション(父)
「正直、不安だった」
「ここで休むと、明日行きづらくなるんじゃないか」
(中学時代の記憶がフラッシュバック)
ナレーション(父)
「一度止まると、動けなくなる」
「それを何度も見てきた」
決断
(父、静かに)
父
「……まあいいか」
母
「え?」
父
「オリエンテーション中だしな」
「今は、流れよりも気持ち優先でいこう」
(母、少し安心する)
息子の部屋
(息子、ベッドに寝転ぶ)
息子(心の声)
「休んだな…」
(少し間)
息子
「……まあいいか」
ラストナレーション
ナレーション(父)
「進む日もあれば、止まる日もある」
「大事なのは、そこで終わらせないこと」
テロップ
「4日目、初めての休み」
シナリオ⑤「5日目、崩れる音」
朝・自室前
(静かな朝。少し重たい空気)
父
「……今日は行けそうか?」
(少し間)
息子(布団の中から)
「……無理」
(短く、はっきり)
ナレーション(父)
「やっぱり、そうか」
自室
(父、部屋に入る)
父
「どうした?」
(息子、顔を伏せたまま)
息子
「……気分悪い」
父
「そっか」
(少し間)
息子
「昨日さ…」
(言葉を探す)
息子
「行くかどうか、ずっと考えてて」
「寝れなかった」
(静かな空気)
息子
「そんなことで悩むくらいなら」
「行かなくていいかなって思った」
(父、何も言えない)
ナレーション(父)
「正しいとも、間違いとも言えなかった」
リビング
(父が母に伝える)
父
「今日は無理みたいだ」
母(すぐに)
「そう…」
(少し間)
母
「ちょっと行ってくる」
自室(母と息子)
(母、部屋に入る)
母
「ほら、準備して」
「さっと行っちゃいなさい」
(息子、布団に潜ったまま)
母
「そんな行けない“ふり”してないで――」
(その瞬間)
息子(強く)
「演技じゃないんだよ!」
(空気が変わる)
息子
「……ちょっと離れて」
(低い声)
息子
「殴っちゃうかもしれないから」
(母、固まる)
衝突
母
「……そんなことで殴るの?」
(声が震える)
母
「怖くて一緒に住めないよ」
「もう出ていくから」
(息子、目を閉じて)
息子
「……もういいよ」
(完全に遮断するような一言)
沈黙
(リビング)
(母、黙って座っている)
(父、立ったまま)
ナレーション(父)
「2年前と、同じ空気だった」
(フラッシュバック:荒れていた過去)
ナレーション(父)
「ここから、崩れた」
父の内心
ナレーション(父)
「また、引きこもるんじゃないか」
「また、戻れなくなるんじゃないか」
(少し間)
ナレーション(父)
「でも――」
(母を見る)
ナレーション(父)
「この2年、あいつもよくやってきた」
外部への相談
(市役所の窓口・静かな空間)
相談員
「ご家族で支えていく形になりますね」
保健師
「無理に登校を続けさせるより、関係性を保つことが大事です」
(父、うなずく)
ナレーション(父)
「“正解”はなかった」
「でも、“一人で抱えない”ことだけは決めた」
夕食
(三人で食卓)
(会話がほとんどない)
(食器の音だけ)
ナレーション(父)
「同じテーブルにいるのに、遠かった」
父の提案
父
「……トランプでもするか?」
(少し明るく言うが)
母
「いい」
息子
「やらない」
(即答)
(沈黙)
父と息子
(食後、少しだけ2人)
父
「……2人で、ぼちぼちやっていくか」
(息子、何も言わない)
(でも否定もしない)
明日の話
父
「明日、行けそうか?」
(少し間)
息子
「……わかんない」
父
「そっか」
手紙
(父、学校からのプリントを出す)
父
「クラスの様子、来てたぞ」
(息子、無言で受け取る)
(パラパラと目を通す)
ナレーション(父)
「興味がないわけじゃない」
「ただ、距離があるだけだった」
夜
(それぞれ別の場所)
母(小さく)
「出ていく準備、しようかな…」
父
「……無理はするな」
父の本音
ナレーション(父)
「正直、思っていた」
「明日も、たぶん行けない」
(静かな夜)
ナレーション(父)
「それでも――」
(息子の部屋のドアを見る)
ナレーション(父)
「終わりにはしたくなかった」
ラストカット
(家の電気が一つずつ消えていく)
テロップ
「5日目、崩れ始める」
シナリオ⑥「6日目、もう一度」
朝6:30・自室前
(静かな朝)
父(ドア越しに)
「朝だよ」
(少し間)
ナレーション(父)
「たぶん今日も、行かない」
(少しだけため息)
父
「今日から授業始まるらしいぞ」
(布団の中から)
息子
「……眠いから、あっち行って」
(冷たくはないが、距離のある声)
会話の探り合い
父
「……弁当、どうする?」
息子
「いらない」
(父、少し間)
ナレーション(父)
「弁当がいらない=行かない」
「なんとなく、そう思っていた」
父
「高校ってさ」
「3分の2くらい出席しないと卒業できないらしいぞ」
(少し間)
父
「今週2日行ってるから」
「今日行けば、このペースならいけるかもな」
(沈黙)
(反応なし)
ナレーション(父)
「やっぱり、無理か」
父
「……じゃあ今日は休みか?」
(少し間)
息子
「……行くよ」
(父、少し驚く)
揺れる決意
父
「え?弁当いらないんだろ?」
息子
「……」
父
「昼、食べないのか?」
息子
「……いい」
(少し間)
息子
「7時に起こして」
7:00・再び
(父、部屋へ)
父
「7時だぞ」
(息子、ゆっくり起きる)
ナレーション(父)
「本当に行くのか?」
「まだ、わからなかった」
リビング
(息子、降りてくる)
(母がいる。少し気まずい空気)
母
「……お弁当、いらないの?」
(息子、少し間)
息子
「……やっぱ、持ってく」
(母、すぐに動く)
母
「わかった」
ナレーション(父)
「昨日とは違う朝だった」
出発
(準備を終える)
父
「行くか」
息子
「……うん」
(玄関を出る)
車の中
(静かな車内)
ナレーション(父)
「まだ安心はできない」
「途中で“やっぱ無理”と言うかもしれない」
(息子、窓の外を見ている)
学校前
(正門)
(息子、立ち止まる)
(ポケットから薬を取り出す)
(少し迷ってから、飲む)
父(見守るだけ)
ナレーション(父)
「自分で選んでいる」
(息子、ゆっくり歩き出す)
息子
「……行ってくる」
父
「ああ」
父の不安
(車内、一人)
ナレーション(父)
「今日、1日もつのか」
「また途中で崩れないか」
(ハンドルを握る手に力が入る)
夕方・帰り
(母が迎えに行く)
(車の中)
(少し沈黙)
息子
「……昨日さ」
(母、少し緊張)
息子
「殴るって言って、ごめん」
(母、少し驚いて)
母
「……うん」
(目に少し涙)
母
「ありがとう、言ってくれて」
(空気がやわらぐ)
夜・外食
(ラーメン屋。少し明るい空気)
父
「今日はお疲れ」
母
「よく行けたね」
(息子、少し照れたように)
息子
「……まあ」
(ラーメンを食べる)
(少し元気な様子)
ナレーション(父)
「2日休んでも、戻れた」
「それが、あいつの中で何か変えた気がした」
帰宅後
(リビング)
父
「お前の目標は、高校卒業だな」
(息子、黙って聞く)
母
「もし今の環境がきつかったらね」
(やさしく)
母
「通信制とか、他の形でもいいんだよ」
(息子、少し考えるような表情)
父の心
ナレーション(父)
「正直、まだ不安はある」
(静かな部屋)
ナレーション(父)
「でも――」
(今日の息子の姿を思い出す)
ナレーション(父)
「“戻れる”って分かったのは、大きい」
ラストカット
(息子、布団に入る)
息子(小さく)
「……まあ、いけたな」
(電気が消える)
テロップ
「6日目、再スタート」
シナリオ⑦「週明け、揺り戻し」
金曜の夜(回想)
(ラーメン屋。明るい雰囲気)
父
「今週3日行けたな」
母
「すごいよ、本当に」
(息子、少し笑う)
息子
「……まあ」
ナレーション(父)
「久しぶりに、普通の時間だった」
土日
(家での静かな時間)
(息子、動画を見たり、少しリラックスしている)
ナレーション(父)
「土日は、穏やかに過ぎた」
日曜の夜
(部屋。暗い)
(息子、ベッドに横になっているが目は開いている)
(スマホの光だけが顔を照らす)
息子(心の声)
「明日か……」
(画面を消す)
(寝返りを打つ)
(また目を開ける)
ナレーション(父)
「少しずつ、空気が変わっていった」
リビング(夜)
母
「薬、飲んだほうがいいんじゃない?」
父
「明日きつくなるぞ」
(息子、首を横に振る)
息子
「……いらない」
(それ以上は言わない)
ナレーション(父)
「無理には飲ませなかった」
「でも、少し嫌な予感はしていた」
月曜・朝
(静かな朝)
父(ドア越しに)
「朝だよ」
(反応なし)
(少し間)
父
「……」
(ドアを開ける)
自室
(息子、布団の中で動かない)
父(近づいて)
「起きる時間だぞ」
(肩を軽く揺らす)
(息子、ゆっくり起き上がる)
息子
「……」
父
「今日どうする?」
「行けそうか?」
(少し間)
息子
「……起き上がれない」
(弱い声)
原因
父
「昨日、寝れなかったのか?」
息子
「……うん」
(短く)
ナレーション(父)
「やっぱりか」
一度引く
父
「……そっか」
(無理に続けない)
父
「じゃあ、少し休んで」
(部屋を出る)
2回目の声かけ
(時間が少し経つ)
(再び部屋へ)
父
「どうだ?」
(息子、目を閉じたまま)
息子
「……無理」
「眠い」
(はっきりしないが、拒否は明確)
選択
(少し間)
父
「じゃあ今日は休もう」
(静かに)
父
「その代わり――」
(少し間)
父
「明日行けるように、今日はちゃんと寝よう」
「薬、飲んでみるか」
(息子、少しだけうなずく)
息子
「……うん」
リビング
(父と母)
母
「どうだった?」
父
「今日は無理だな」
(少し間)
母
「そっか…」
父
「でも、ちゃんと理由はある」
「寝れてない」
(母、うなずく)
父の心
ナレーション(父)
「“またダメか”とも思った」
(少し間)
ナレーション(父)
「でも、前とは少し違う」
(息子の「うん」を思い出す)
ナレーション(父)
「次に向けて、話ができている」
自室・昼
(息子、静かに横になっている)
ナレーション(父)
「止まった日」
「でも、崩れたわけじゃない」
ラストカット
(カーテン越しの昼の光)
テロップ
「月曜日、休み」
シナリオ⑧「火曜日、揺れながら進む」
朝・自室前
(静かな朝)
父
「朝だよ」
(ドア越し)
父
「昨日、薬飲んで寝れたか?」
(少し間)
息子
「……うん……うーん」
(はっきりしない返事)
ナレーション(父)
「完全ではないけど、少しは寝れたみたいだ」
父
「じゃあ、また後で起こしに来るな」
再び起床
(時間が経つ)
父
「そろそろだぞ」
(部屋に入る)
(息子、起きてはいるが動けない)
父
「どうする?」
(少し間)
息子
「……どうしようかな」
(悩んでいる)
(さらに間)
息子
「……行くよ」
(小さく)
ナレーション(父)
「“行く”と言った」
「でも、それはまだ確定じゃない」
リビング
(息子、降りてくる)
(着替えながら)
息子
「……めんどくさい」
「行きたくない」
(それでも手は止まらない)
ナレーション(父)
「口は“拒否”してる」
「でも体は“前に進んでいる”」
出発
(玄関)
父
「行くか」
息子
「……うん」
(外へ)
車の中
(ドアが閉まる)
(エンジンがかかる)
(少し沈黙)
息子
「……やっぱ、行きたくない」
(父と母、目を合わせる)
ナレーション(父)
「ここで来たか」
理由
父
「なんで?」
息子
「……いろいろだよ」
「わかんない」
(曖昧だけど、重い言葉)
一度戻る
父
「……一回降りるか」
(車を止める)
母
「家でちょっと話そう」
(3人で家に戻る)
リビングでの対話
母
「なんで行かないの?」
息子
「……めんどくさくなった」
「行きたくなくなった」
母
「このままだとさ」
「半分も行けてないよ」
父
「卒業、厳しくなるぞ」
(少し間)
息子
「……じゃあ、やめる」
(空気が止まる)
将来の話
母
「やめて、その後どうするの?」
父
「やりたいことがあるなら応援する」
「でも、何もないなら――」
(少し間)
父
「今はまだ、いた方がいい」
(息子、黙る)
本音
父
「何が嫌なんだ?」
(少し間)
息子
「……人」
父
「人?」
息子
「昔から知ってるやついないし」
「仲良くできるやつもいない」
「気が許せる人がいない」
(静かな空気)
ナレーション(父)
「それが、一番きついんだ」
現実の話
父
「でもな」
「どこ行っても、最初はそうなんだよ」
母
「大学でも、仕事でもね」
(息子、聞いているが納得はしていない)
揺れる言葉
息子
「……俺、働くつもりないし」
「生きるつもりもない」
(母、少し息をのむ)
息子
「……でも、自分で死ぬ気はない」
(矛盾した本音)
ナレーション(父)
「迷ってる」
「ただ、それだけは分かった」
小さなきっかけ
母
「今日さ、午後病院あるよね」
父
「半日で帰れるぞ」
母
「一緒に行って、そのあと――」
(少し明るく)
母
「マックでも食べる?」
(少し間)
息子
「……え、それできるの?」
父
「行けばな」
(さらに間)
息子
「……じゃあ、行く?」
(空気が少し変わる)
再出発
(再び車へ)
ナレーション(父)
「理由は、小さくていい」
(車内)
息子
「……今日、どうやって過ごそうかな」
(自分なりに考え始めている)
学校前
(正門)
父
「いけそうか?」
息子
「……たぶん」
(ゆっくり降りる)
母
「いってらっしゃい」
息子
「……いってきます」
父の心
(車内)
ナレーション(父)
「ギリギリだった」
(少し間)
ナレーション(父)
「でも――」
(息子の背中を見る)
ナレーション(父)
「今日も、つながった」
夕方
(帰宅後、少し疲れているが崩れてはいない息子)
ナレーション(父)
「完璧じゃない」
「でも、続いている」
ラストナレーション
ナレーション(父)
「誰かのために頑張る日もある」
「それでもいいと思った」
テロップ
「火曜日、ギリギリで継続」
シナリオ⑨「続けるか、変えるか」
朝・リビング
(静かな朝)
(息子の部屋のドアは閉まったまま)
ナレーション(父)
「今朝も、行かなかった」
(時計の音だけが響く)
少し遅い朝
(息子がリビングに来る)
父
「……もう今週、全部休むか」
(息子、少し間)
息子
「……うん」
(あっさりした返事)
ナレーション(父)
「止まると、やっぱり続く」
理由
父
「昨日、寝れたんだろ?」
息子
「……まあまあ」
父
「じゃあ、なんで?」
(少し間)
息子
「……学校行くとさ」
(言葉を探す)
息子
「……孤独がきつい」
(静かな一言)
本音
父
「何かあったわけじゃないのか?」
息子
「……ない」
(すぐに)
息子
「ただ、いるのがきつい」
ナレーション(父)
「理由がない苦しさ」
「これが一番、やっかいだった」
学校の違和感
父
「何が合わないんだ?」
息子
「……イベントとか」
「体育とか」
「英語で話すやつとか」
(少し間)
息子
「そういうの、いらない」
(はっきり)
息子
「俺、勉強だけしてたい」
理想と現実
ナレーション(父)
「最初は、違ったはずだ」
(回想:入学前)
息子(回想)
「友達できるかも」
(現在に戻る)
ナレーション(父)
「たった1週間」
「3日通って、もう諦めたのかもしれない」
選択肢
父
「……じゃあさ」
(少し間)
父
「通信制にするか?」
(息子、少し顔を上げる)
息子
「……それなら、いいかも」
現実的な話
父
「でもな、通信もいろいろあるぞ」
母
「サポートあるところじゃないと、きついかもね」
父
「自分でちょっと調べてみるか?」
(少し間)
息子
「……無理」
「今そんな元気ない」
(視線を落とす)
親の限界
(息子が部屋に戻る)
(リビングに残る父と母)
母
「……もう、きついね」
父
「ああ」
(少し間)
父
「毎朝さ」
「行くか行かないかで、こっちも消耗する」
母
「気を使い続けるの、限界かも」
(沈黙)
本音
父
「本当はさ」
「通ってほしいよな」
母
「……うん」
父
「でも――」
(少し間)
父
「今の形じゃ、無理だな」
将来
(再び息子の部屋)
父
「大学は行くって言ってたよな」
息子
「……うん」
父
「じゃあ、勉強は続けないとな」
(息子、うなずく)
最低限の約束
父
「とりあえずさ」
「在籍してる間は、行ける日は行こう」
(少し間)
息子
「……うん」
夜
(息子、布団に入る)
息子
「……もう寝る」
(電気が消える)
父の心
ナレーション(父)
「続けるか」
「変えるか」
(静かな部屋)
ナレーション(父)
「どっちが正解かは、まだわからない」
ラストカット
(閉まったドア)
テロップ
「選択の分かれ道」
シナリオ⑩「別の道で、進む」
昼・自室
(カーテンは閉まり気味、少し暗い部屋)
(息子、ベッドに横になりスマホを見ている)
ナレーション(父)
「今日も、行かなかった」
(少し間)
ナレーション(父)
「でも、今日は少し違った」
リビング
(母と父、小さな声で)
母
「今日のこと、話してないよね…」
父
「ああ」
母
「ちょっと怖いんだよね、もう」
(父、うなずく)
ナレーション(父)
「“聞く”ことが、怖くなっていた」
息子の本音(父と二人)
(夕方、リビングに息子が来る)
(母はいないタイミング)
父
「……どうするか、考えてるか?」
(少し間)
息子
「……うん」
(椅子に座る)
息子
「イベントとかさ」
「体育とか」
(少し顔をしかめる)
息子
「無理なんだよね」
(静かに)
息子
「でも、勉強はやりたい」
将来
父
「どのくらい?」
息子
「……ちゃんとやりたい」
(少し間)
息子
「大学も行きたいし」
「難しいとこ、挑戦したい」
(父、少し驚く)
ナレーション(父)
「ちゃんと“先”を見ていた」
新しい提案
父
「今日、先生から連絡あってな」
(息子、顔を上げる)
父
「別室で過ごす方法もあるって」
息子
「……別室?」
父
「教室じゃなくて」
「静かな場所で、自習したり」
「先生に教えてもらったりできるらしい」
(少し間)
息子
「……それなら」
(小さく)
息子
「行けるかも」
決断
父
「やってみるか?」
(少し間)
息子
「……うん」
「明日、行ってみる」
ナレーション(父)
「初めて、“無理じゃない形”が見えた」
母との共有
(夜・リビング)
父
「別室登校、やってみるって」
母(少し驚きながら)
「ほんと?」
父
「ああ」
母(少し安心した表情)
「よかった…」
価値観の違い
ナレーション(父)
「みんなと同じことができるのが“普通”だと思っていた」
(少し間)
ナレーション(父)
「でも、違った」
(息子の姿)
ナレーション(父)
「勉強だけに集中したい子もいる」
未来の片鱗
(自室)
(息子、机に座る)
(ノートを開く)
ナレーション(父)
「大学で何か研究をしたいらしい」
(息子、ペンを動かす)
ナレーション(父)
「詳しくは、まだ教えてくれない」
(少しだけ微笑む父)
ナレーション(父)
「でも、それでいい」
再スタート前夜
(布団に入る息子)
息子(心の声)
「……明日、どうなるかな」
(少し間)
息子
「……まあ、やってみるか」
父の願い
ナレーション(父)
「中学2年から止まっていた時間」
(過去の断片)
ナレーション(父)
「それを、少しずつ取り戻せたらいい」
ラストカット
(朝の光が差し込む準備のカット)
テロップ
「新しい形で、再スタート」
シナリオ⑪「比べることを、やめ始める」
金曜の朝
(静かな朝)
(息子の部屋のドアは閉まったまま)
ナレーション(父)
「今日は金曜日」
「でも、行かなかった」
(時計の針の音)
対比(先週の金曜)
(回想:先週の朝)
ナレーション(父)
「先週は、水木休んで――」
(息子が家を出るシーン)
ナレーション(父)
「それでも金曜は行けた」
(現在に戻る)
ナレーション(父)
「今週は、違った」
現実
(リビング)
父
「今週、1日半か…」
母
「このままだと、出席日数…」
(言葉を濁す)
ナレーション(父)
「高校卒業、難しいかもしれない」
(静かな空気)
選択肢の整理
(テーブルに資料)
父
「通信制も調べてみた」
母
「どうだった?」
父
「74単位取れば卒業」
「3年間で」
(紙を見ながら)
父
「1年で25単位くらいのペース」
「通学もあるとこもあれば、ほぼないとこもある」
母
「じゃあ、今よりは…」
父
「通いやすいかもしれないな」
親の揺れ
母
「でもさ…」
(少し間)
母
「友達とか…どうなるんだろうね」
父
「部活もないしな」
母
「コミュニケーション…」
(言葉が続かない)
ナレーション(父)
「“普通”から離れる不安は、やっぱりあった」
価値観の変化
(少し間)
父
「……でもさ」
母を見る
父
「無理して合わせる必要、あるのかな」
(母、少し考える)
父
「みんなと同じじゃなくてもいいのかもな」
(静かに)
息子の様子
(夕方)
(息子、普通にご飯を食べている)
ナレーション(父)
「学校には行けてない」
「でも――」
(母が腰を押さえる)
母
「ちょっと腰が…」
(息子、立ち上がる)
息子
「湿布あるよ」
(手際よく貼る)
母
「ありがとう」
(少し笑顔)
ナレーション(父)
「ちゃんと、優しさはある」
外食
父
「今日はラーメンの日だぞ」
息子
「……あんまりお腹空いてない」
父
「じゃあどうする?」
息子
「別のとこでいい」
(別の店へ)
(普通に食事する3人)
ナレーション(父)
「特別じゃないけど、穏やかな時間だった」
父の内面
ナレーション(父)
「他の子と比べてしまう」
(学校のイメージ、元気に通う生徒たち)
ナレーション(父)
「早く追いついてほしいと思ってしまう」
(少し間)
ナレーション(父)
「でも――」
(息子の穏やかな姿)
ナレーション(父)
「この子には、この子のペースがある」
受け入れ
父(小さく)
「少しずつでいいか」
母
「……うん」
(2人、同じ方向を見る)
未来への余白
ナレーション(父)
「発達のペースは、人それぞれ違う」
(少し間)
ナレーション(父)
「時間はかかるかもしれない」
(息子の後ろ姿)
ナレーション(父)
「でも――」
(やわらかい光)
ナレーション(父)
「どこかで、夢中になれるものが見つかればいい」
ラストカット
(夜、静かな家)
テロップ
「焦らず、進む」
シナリオ⑫「受け入れるという覚悟」
日曜・昼
(リビング)
(息子、ソファでスマホを見ている)
(YouTubeの音が小さく流れる)
ナレーション(父)
「気づけば、10時間くらい見ていた」
(画面をスクロールし続ける手)
ナレーション(父)
「ただの怠けじゃない」
「不安から目をそらすための時間」
日曜・夜
(部屋は暗い)
(息子、ベッドに横になるが目は開いている)
息子(心の声)
「……明日か」
(寝返りを打つ)
(スマホを開く→閉じる)
ナレーション(父)
「日曜の夜になると、空気が変わる」
薬の葛藤
母
「薬、飲んだほうがいいよ」
父
「寝れないと、明日きついぞ」
(息子、首を横に振る)
息子
「……いらない」
(小さく)
ナレーション(父)
「眠れないのに、飲まない」
「それもまた、不安の形だった」
月曜・朝
(静かな朝)
父(ドア越し)
「朝だよ」
(反応なし)
(ドアを開ける)
(息子、布団の中で丸まっている)
父
「どうする?」
(少し間)
息子
「……怖い」
(弱い声)
父
「何が?」
息子
「……学校」
(静かに)
息子
「行けない」
現実の受け止め
(父、少し黙る)
ナレーション(父)
「“行きたくない”じゃない」
「“怖くて行けない”」
(息子の背中)
ナレーション(父)
「もう、気合いの問題じゃなかった」
リビング
(父と母)
母(缶を持ちながら)
「……もう無理かもね」
(やけ酒気味に飲む)
父
「……ああ」
(少し間)
母
「辞めるしかないのかな」
(沈黙)
次の道
父
「でもさ」
(ゆっくり)
父
「通信制っていう道もある」
母
「……うん」
父
「学校に行く形じゃなくても」
「進める道はある」
家族の覚悟
ナレーション(父)
「結局、必要なのは――」
(家族3人の空間)
ナレーション(父)
「親の覚悟だった」
受け入れ
父
「時間かかるな」
母
「……うん」
父
「でも、しょうがない」
(少し間)
父
「この子のペースでやるしかない」
息子の部屋
(息子、布団の中)
(静かに天井を見ている)
ナレーション(父)
「何年かかるかはわからない」
(少し間)
ナレーション(父)
「でも――」
小さな希望
(机の上に置かれたノート)
(少しだけ開かれている)
ナレーション(父)
「やりたい気持ちは、まだ消えていない」
ラストカット
(家の中、静かな夜)
テロップ
「受け入れることから、始める」
シナリオ⑬「進み方を変える日」
月曜・朝
(薄暗い部屋)
父(ドア越しに)
「朝だよ」
(反応なし)
(ドアを開ける)
(息子、布団にくるまっている)
父
「……どうする?」
(少し間)
(布団がわずかに揺れる)
父
「学校、行けそうか?」
(沈黙)
(近づく)
父
「ねえ」
(布団の中で、小さく震えている)
息子(かすれた声)
「……無理」
「……怖い」
(父、言葉を止める)
ナレーション(父)
「“行きたくない”じゃなかった」
「“怖い”だった」
父の選択
(少し間)
父
「……そっか」
(ゆっくり)
父
「無理して行かなくていいよ」
(息子、少しだけ力が抜ける)
父
「昼、もし行けそうだったら声かけて」
「送っていくから」
(さらに)
父
「少しでも出席つけばいいしな」
(息子、小さくうなずく)
昼
(静かな家)
(息子、起きてはいるが動かない)
ナレーション(父)
「結局、その日は行かなかった」
夕方・家族の話し合い
(リビング)
父
「このままだとさ」
(少し間)
父
「今の高校、出席日数足りなくなる」
母
「無理して続ける必要はないと思う」
(息子、静かに聞いている)
父
「通信制、調べてたよな」
(紙を出す)
父
「地元で通うタイプと」
「オンライン中心のところ」
(少し間)
父
「どっちでもいい」
「卒業できればいい」
選択
(少し長い沈黙)
息子
「……人、ちょっと怖いから」
(小さく)
息子
「オンラインの方がいい」
(母、ゆっくりうなずく)
父
「わかった」
ナレーション(父)
「決まった」
転換
ナレーション(父)
「今の高校は、ここで一区切り」
(静かな空気)
ナレーション(父)
「逃げじゃない」
「やり方を変えるだけだ」
夜・外出
(父と息子、コンビニへ)
(アイスケースを開ける音)
父
「どれにする?」
息子
「……これ」
(2人、外に出る)
帰り道
(歩きながら)
息子
「……俺ってさ」
(少し間)
息子
「精神病なのかな」
(父、すぐには答えない)
息子
「……いつか、治るといいな」
(静かな夜)
父
「……時間かかるかもな」
(少し間)
父
「でも、よくはなると思う」
父の本音
ナレーション(父)
「“普通”じゃなくてもいい」
(息子の横顔)
ナレーション(父)
「笑っていられる方が、大事だ」
帰宅
(玄関のドアが開く)
(母がいる)
母
「おかえり」
息子
「……ただいま」
(少しだけ、柔らかい空気)
ラストカット
(息子、自室の机に座る)
(パソコンを開く)
ナレーション(父)
「新しい形で、やり直す」
テロップ
「進み方を、変える」
シナリオ⑭「静かな後退」
水曜・朝
(カーテンは閉まったままの部屋)
父(小さくドアを開ける)
(息子、布団にくるまっている)
父
「……朝だよ」
(反応なし)
(少し間)
父
「……学校は、もういいから」
(やさしく)
父
「薬だけ、あとで飲もうな」
(カーテンを少し開ける)
(光が差し込む)
ナレーション(父)
「それ以上は、何も言えなかった」
前日の夜(回想)
(暗い部屋)
(息子、スマホを見ている)
(動画の音がぼんやり流れる)
ナレーション(父)
「昨日、通信制に行くって決めた」
(少し間)
ナレーション(父)
「それでも――」
(息子、ぼんやりした表情)
ナレーション(父)
「元気はなかった」
食事
(テーブル)
(食事がほとんど手つかず)
母
「少しでも食べる?」
息子
「……いらない」
(小さく首を振る)
ナレーション(父)
「喉を通らない」
生活の崩れ
(浴室の前)
(電気はついていない)
ナレーション(父)
「風呂にも入らなかった」
(布団に入る息子)
ナレーション(父)
「ただ、早く一日を終わらせたかったんだと思う」
心の中
(スマホの光だけが顔を照らす)
ナレーション(父)
「動画を見続けるのも」
「きっと、気を紛らわせるためだった」
父の振り返り
(リビング、静かな夜)
父(心の声)
「頑張ってたんだよな」
(入学式の姿、数日の登校)
父(心の声)
「でも、数日で止まった」
(少し間)
父(心の声)
「なんでだろうな」
自責と整理
父(心の声)
「もっとできたこと、あったのかもしれない」
(少し間)
父(心の声)
「でも――」
(深く息を吐く)
父(心の声)
「親として、できることはやってきたと思う」
たとえ
(静かなイメージ)
ナレーション(父)
「もしかしたら――」
(水の中の魚のイメージ)
ナレーション(父)
「海水の中に、淡水魚が入ってしまったのかもしれない」
(別の穏やかな水辺のイメージ)
ナレーション(父)
「この子には、この子に合った場所がある」
現在・朝
(部屋に戻る)
(息子、少しだけ目を開ける)
父
「……無理しなくていい」
(静かに)
父
「起きたら、薬飲もうな」
(息子、わずかにうなずく)
見守り
(父、部屋を出る)
(ドアを静かに閉める)
ナレーション(父)
「今は、これ以上できない」
(少し間)
ナレーション(父)
「でも、それでいいと思った」
ラストカット
(カーテン越しのやわらかい光)
(時間がゆっくり流れる)
テロップ
「止まっているようで、進んでいる」
シナリオ⑮「自分に合う場所を探す」
翌朝
(やわらかい朝の光)
(リビング)
(息子がゆっくり起きてくる)
ナレーション(父)
「昨日、あれだけ落ち込んでいたのに」
(息子、椅子に座る)
ナレーション(父)
「少し、戻ってきていた」
会話のきっかけ
父
「……通信制の資料、あるけど」
(テーブルに置く)
父
「読んでみるか?」
(少し間)
息子
「……うん」
「まあ、自分の学校だし」
(軽く手に取る)
ナレーション(父)
「前に進む気持ちは、残っていた」
父の内面
ナレーション(父)
「合わない環境で無理するより」
(水のイメージ)
ナレーション(父)
「合う場所で生きる方がいいのかもしれない」
問い
ナレーション(父)
「不登校って、なんなんだろう」
(少し間)
ナレーション(父)
「逃げなのか」
「それとも――」
(息子の横顔)
ナレーション(父)
「自分を知る過程なのか」
息子の本音
父
「教室、何がきついんだ?」
(少し間)
息子
「……空気」
父
「空気?」
息子
「なんかさ」
「いろんな人のこと、気になっちゃう」
(少し考えながら)
息子
「関係ない人の人混みなら平気なんだけど」
(静かに)
息子
「同じ空間にずっといるのが無理」
理解
ナレーション(父)
「敏感なんだ」
(少し間)
ナレーション(父)
「見えないものを、感じすぎてしまう」
挑戦の意味
父
「でもさ、高校は行こうと思ったんだろ?」
(息子、うなずく)
息子
「……中学ダメだったけど」
「高校ならいけるかなって思ってた」
(少し間)
息子
「だから、行った」
再定義
(静かな空気)
父
「じゃあさ」
(やわらかく)
父
「それ、失敗じゃないな」
(息子、少し顔を上げる)
父
「挑戦して、違うって分かっただけだ」
次へ
息子
「……じゃあ、次でいいか」
(小さく)
父
「そうだな」
回復
ナレーション(父)
「昨日は、底まで落ちた」
(少し間)
ナレーション(父)
「でも今日は、少し戻ってきた」
(息子、資料をめくる)
ナレーション(父)
「エネルギーは、完全には消えていない」
父の気づき
ナレーション(父)
「10代、20代は――」
(遠くを見る)
ナレーション(父)
「自分を理解する時間なのかもしれない」
未来
(息子、ペンを持つ)
(資料に何か印をつける)
ナレーション(父)
「遠回りに見えても」
(少し間)
ナレーション(父)
「ちゃんと前に進んでいる」
ラストカット
(机に向かう息子の背中)
(朝の光)
テロップ
「それは失敗じゃない」
シナリオ⑯「自分の言葉で、進む」
金曜の夜・ラーメン屋
(店内のざわめき)
(3人でテーブルを囲む)
(湯気の立つラーメン)
ナレーション(父)
「金曜日」
「いつものラーメンの日」
(少し穏やかな空気)
息子の一言
(箸を持ちながら)
息子
「……俺さ」
(父と母、顔を上げる)
息子
「教室の雰囲気、ダメだったんだなって思った」
(静かに)
言語化
父
「雰囲気?」
息子
「うん」
(少し考えながら)
息子
「例えばさ」
「誰かのこと見たらさ」
(少し間)
息子
「“見てんじゃねえ”って思われてる気がする」
(母、驚きつつも黙って聞く)
息子
「クラスの中の空気とかさ」
「いろんなこと、気にしすぎちゃう」
(小さく)
息子
「だから、あそこにいるの無理なんだなって」
理解
ナレーション(父)
「やっと言葉になった」
(少し間)
ナレーション(父)
「見えない“圧”に、ずっと耐えていたんだ」
理想と現実
(少し沈黙)
息子
「ほんとはさ」
(ラーメンを見ながら)
息子
「高校行って」
「部活とかやって」
(少し笑う)
息子
「キラキラした青春、送りたかった」
(間)
息子
「……でも、無理かなって思った」
次の選択
(少し空気が変わる)
息子
「だからさ」
(顔を上げる)
息子
「通信制にして」
「自分でやりたいこと見つけて」
(ゆっくり)
息子
「いろいろ学んでいきたい」
親の受け止め
(父と母、目を合わせる)
父
「いいと思う」
(はっきり)
母
「うん、それでいいよ」
(やわらかく)
再定義
ナレーション(父)
「全日制でできなかったこと」
(少し間)
ナレーション(父)
「それは“失敗”じゃない」
(息子の横顔)
ナレーション(父)
「ちゃんと経験として残っている」
変化
(食事を続ける3人)
ナレーション(父)
「最近、少し元気になってきた」
(息子、普通に食べている)
ナレーション(父)
「“通わなきゃいけない”プレッシャーがなくなったからだろう」
夜の変化
(家・夜)
(以前の重い空気のイメージ → 今は静かで穏やか)
ナレーション(父)
「日曜の夜の、あの重さも」
(少し間)
ナレーション(父)
「今は、ない」
父の想い
(帰り道、夜風)
ナレーション(父)
「この子は、この子のやり方で進めばいい」
(息子の背中)
ナレーション(父)
「普通のルートじゃなくてもいい」
決意
(家の前)
父
「じゃあ、決まりだな」
息子
「……うん」
母
「新しいスタートだね」
未来
(自室)
(パソコンを開く息子)
ナレーション(父)
「自分の道を、自分で選んだ」
(少し間)
ナレーション(父)
「それが一番、大事なことだと思った」
ラストカット
(4月の夜空)
テロップ
「その選択は、前に進んでいる」


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